音鑑の助成研究 特設ページ

ONKANウェブネット > 音鑑の助成研究 特設ページ > 平成22年度入選「日本の伝統的歌唱研究会」

日本の伝統的歌唱研究会

 このページは、「平成22年度 第43回 音楽鑑賞教育振興 論文・作文募集」研究助成の部に入選され、2年間の助成研究に取り組まれている「日本の伝統的歌唱研究会」の特設ページです。

入選研究テーマ 「我が国の伝統音楽の鑑賞指導法および教材化研究」pdf(PDF:1.4MB)
─伝統的歌唱の表現体験活動と鑑賞との関連を軸に─
研究グループ 日本の伝統的歌唱研究会
本多佐保美 代表、千葉大学准教授
志民一成  静岡大学准教授
山田美由紀 千葉大学・静岡大学非常勤講師、長唄三味線演奏家
森下華代  静岡大学教育学部附属島田中学校教諭
村田美香  千葉大学教育学部附属小学校教諭

第2回報告 長唄『雨の四季』より「飴売り」を教材とした検証授業new

 みなさん、こんにちは。
 長唄を中心とする日本の伝統的歌唱の教材化研究の第2弾をご報告します。
 前回のレポートでは、生徒が自分のもっている声を生かしてのびのびと歌うことができる曲として、昨年度までに実施した長唄『新曲浦島』より「船唄」の部分をご紹介しました。「船唄」は、長唄の声そのものをぞんぶんに聴かせる聴かせどころの部分でした。
 さて、今回取り上げる長唄の曲は、長唄『雨の四季』(昭和42年、山田抄太郎作曲)より「飴売り」の部分です。「飴売り」の部分は、「船唄」とは対照的に、長唄の「しゃべるようにうたう」歌い方のよさをたっぷり味わえる曲となっています。
 長唄演奏の専門家である山田美由紀の発案により教材提案がなされ、教材曲のDVD作成(録画)、山田と唄方の竹内さくら氏とによる授業者へのレクチャーを経て、7月には実際に中学生を対象とする検証授業が行われました。
 「飴売り」の歌詞の冒頭部分は、「飴売り」「飴屋」などと呼ばれ、縁日での飴売りの売り声を表している部分です。飴の様々な中身を、各地の名産を取り入れて歌っています。
 この曲が教材としてすぐれている理由は、いくつか考えられますが、特に以下の点をここでは挙げておきます。

1. 日本語のことばのリズム、抑揚、高低アクセントなどを意識して歌うことができる。
2. 長唄によく見られる、音程にとらわれない歌い方の一例を知ることができる。
3. 三味線を用いなくても、ひざや手拍子を打つなどして練習できる。また、三味線の手は比較的簡単なパターンの繰り返しなので、三味線を取り入れることも比較的、容易である。
4. 全員で歌う、歌う箇所を分担する、リレー式に歌う、互いの歌を聴きあうなど様々な形態での展開が可能で、最終的には一人で歌うことを目標にできる。
5. 「飴売り」の前後を含めた鑑賞への発展性がある。

 7月に静岡大学附属島田中学校の松下成輝教諭により中学1~3年生を対象とした授業を、同じく7月に掛川市立掛川西中学校の齊藤昇教諭により中学1~3年生を対象とした授業を実施していただきました。特に静岡大学附属島田中学校の授業では、静岡大学の学生たちがTTとして加わり、生徒と一緒に歌ったり三味線を弾いたりして授業をつくっていきました。
 今回は、指導の方法として、ゲスト・ティーチャーをお呼びするのでなく、DVDを作成し、それを用いて音楽の教師が授業を行なうということを試みました。山田と竹内による事前のレクチャーで、飴売りを歌う際の留意点として授業者に特に伝えた点は、1. モデル演奏のものまねをするように歌う、2. ことばをしゃべるように歌う、3. 「売り声」を表現するつもりで歌う、の3点でした。
 音の高さのとおりに歌うという概念ではなく、ことばのリズム、抑揚、高低アクセントを意識して、しゃべるように歌うのがこの題材の眼目です。ふだんのしゃべり声とも合唱の声とも違う、モデルとなる竹内の歌い方の特徴をつかむことが重要となります。また、飴売りは売り声なので、飴が食べたくなるように、飴が買いたくなるように、お腹から声を出し、呼びかけるようにして「その気になって」歌うことが大切になります。
 授業を終えての生徒の感想文で、3年の女子生徒は「合唱曲とかと違ってリズムにのってうたう感じだし、恥さえ捨ててしまえば楽しめる」と表現しています。また、2年の女子生徒は、「思っていたよりイントネーションがおもしろい。声を裏返して歌うような歌い方は普通の合唱ではありえないけど、歌として使っていてすごい」と書いていました。

 授業を実践してみて、日本語を歌うときに気をつけるべき点もさらにいくつか見えてきました。言葉の高低アクセントが地方によって異なるため、無意識のうちに静岡の言葉のアクセントが表れたところがありました。逆に言えば、長唄は江戸の芸であることが、はっきりとわかりましたが、日本語を歌うとき、言葉の高低アクセントを意識すること、また子音をどのように発音するか、あるいは鼻濁音を意識して歌うこと等は、長唄に限らず重要なことです。
 長唄という我が国の伝統的な歌唱表現に親しむことを通して、生徒たちには日本語の響きに関心をもち、声の表現の多様性に気づいていってほしいと願っています。

第1回報告 アジア太平洋地域音楽教育研究大会

 みなさん、こんにちは。
 日本の伝統的歌唱研究会代表の千葉大学の本多佐保美です。
 私たち研究グループは、音鑑「平成22年度 第43回 音楽鑑賞教育振興 論文・作文募集 研究助成の部」にて研究助成をいただき、現在、長唄を中心に日本の伝統的歌唱の鑑賞指導法と教材化研究を推進しています。
 これからONKANウェブネットにて、研究の進捗状況を随時、ご報告していきます。どうぞよろしくお願い致します。

 さて、第1回目のレポートは、2011年7月4~6日に台湾・台北にて行われましたAPSMER(アジア太平洋地域音楽教育研究大会)にてポスター発表を行ってきましたそのご報告です。
 台湾は台北市の台北市立教育大学にて開催されたこの研究大会(国際学会)では、地元、台湾や日本はもとより、韓国、シンガポール、タイ、香港など各地から音楽教育研究者が集まり、研究成果の共有と交流を行いました。台湾は連日、35度を超える猛暑で、ポスター発表会場は熱気にあふれ、玉の汗を流しながらの発表となりました。
 発表タイトルは「How to Teach the Singing of Traditional Japanese Music: A Case Study of Nagauta Singing in a Secondary School 日本の伝統的歌唱をどのように教えるか―中学校における長唄指導の事例をもとに」、本多と山田美由紀(長唄三味線演奏家)、志民一成(静岡大学)の3名による発表です。
 昨年度までに中学校にて実践した、長唄『新曲浦島』より「船唄」を教材とする事例の報告と考察を中心に発表しました。『新曲浦島』の「船唄」の部分は、三味線の伴奏が止み、長唄の声をぞんぶんに聞かせる聞かせどころで、生徒が自分のもっている声を生かしてのびのびと歌うことができ、旋律もとらえやすく、教材化に適した曲です。専門家である山田のアイデアをもとに実施した授業の流れ、指導方法、教材の意義などを提示するとともに、静岡大学教育学部附属島田中学校の授業での生徒の声の変化の様子について、倍音の表れ等を指標とした音響的な分析をもとに考察を行ないました。
 「この研究のキーポイントは何か」、「腹から声を出すとはどういうことか」、「伝統的な長唄の楽譜は何を表しているのか」等々、活発な質問が相次ぎました。参会者と一緒に、「船唄」の一節をうたってみたり、iPadに入れて持参した生徒の声の様子を示したりと、実際の音をまじえての発表になりました。
 アジア各国では、それぞれの国の事情はあるものの、どの国においても西洋音楽中心の教育システムの中で、伝統的な音楽をどのように扱っていくのか、課題を抱えています。今回の発表をとおして、アジアの他国の事例から学んだり、また声の質に関する用語や、呼吸法あるいは身体の使い方に関する用語をさらに精査し、共通の基盤にたった上で研究を推進していく必要性も強く感じました。
 現在、研究会では、「船唄」以外の長唄の曲についても、さらなる教材化をするべく計画中です。今後のレポートにどうぞご期待ください!

ページの先頭へ戻る